相変わらずに交遊の輪が広い子で。
同い年のお友達は数えるほどしかいないのに、
年上の…となると、中学生辺りに留まらず、
高校生やら社会人やら、
子供の彼の世代からすりゃあ、
すっかり大人の部類に入ろうクチの知己の方こそ、
山のようにいるらしく。
しかも職種も様々で、
お父さんつながりの元アメフト黄金世代のおじさんたちとか、
その後継者の高校生はともかくとして。
自分の可愛らしい風貌で引っかけたと豪語する、
地元管轄の交通課の婦警さんたちから、
商店街の老いも若きも引っくるめた看板娘たちとか、
ケーブルテレビのリポーター嬢たちに、
駅前の歓楽街で働く水商売のお姉様がたまでと。
「……気のせいだろか、
綺麗なお姉さんカテゴリの頭数が多くないか。」
「しかも、清純 or 硬派系から、
色っぽくってとことん柔らかい系まで、
選りどりみどりだし。」
「商店街の買い食い系総菜店のおかみさんたちまで、
きっちり懐柔してんもんな。」
この女殺しめがと、
忘れたことに思い出しちゃあ、こそこそ毒づく部員らなのは、
坊やの側に特にひけらかすつもりはないらしく、
いちいち話題に持ち出したりしないせい…だったのだが。
【 そいでね、聞いてよヨウちゃん。
あいつったらサ、
アタシのこと、いつもいつもサァあ、】
小学生なんのに何でまた…と、
不思議なんだけれど妙に腑に落ちるというか、
…真相までは怖くてわざわざ訊けないというかの、
ヨウイチ坊やの七不思議の その一
日頃からも幾つか持ってて
全部を等しく使いこなしているらしい携帯電話の中の。
ファンシーなキャラクターの“ロケットベア”を
スパングルやストーンでキラキラリンとデコされた、
そりゃあ可愛らしいタイプのを。
ベンチの上へ開いてオープントークモードにし、
相手がつらつらと話しかけてくるのを だだ流したまんまにしており。
ご当人は電話に背中を向けての、葉柱と向かい合って、
部員の名簿や戦歴を綴ったバイダーなぞ広げつつ、
冬休み中の基礎トレの班分けなんぞ、打ち合わせていたりする。
「だから、トシは一美には何でか頭が上がらないから、同じ班にしてサ。」
「そういう相性まで、いつの間に把握してんだ、お前はよ。」
一年の暴れん坊が、だがだが二年の誰とだけは相性が…なんてこと、
自分よりも詳しいものだからと葉柱が怪訝そうな顔になり。
大きなお兄さんを参らせたのが嬉しいか、
まだまだ丸みの強い愛らしさが勝っている金茶の双眸を、
へっへ〜んと自慢げに細めて見せるところなんかは、
ある意味、可愛げといや言えるのかもしれないが。
【 そいでね、お店にも来ないから文句の言いようがなくってサ。】
オープントークモードにしてあるのは、
返事が要るところを聞き逃さぬように…らしいのだが。
それ以外はといえば、
相手の声のトーンに合わせて
“うん”とか“そうだね”とか“う〜ん”とか、
坊やのお声で適当な相槌を打つよう仕込まれた、
特製のソフトがお相手しておいで。
「いいのか、あんな“相槌ソフト”に相手させて。」
「いんだよ。」
こちらはお兄さんが集中してないことの方へ ムッと来たものか、
バインダーからちょっぴり冷めたお顔を上げた小悪魔様。
聞いてて判んだろ?
どうかすると口はさむ隙さえ与えずのノリで喋りっ放しなんだし、
それにサ、
「ミハルのカレ氏話は、いつも途中からループしだすんだ。」
今日のだってよ、
何でも旅行社に勤めてるカレ氏から、
ノルマもあるから頼むよと
参加してほしいって紹介された伊豆の温泉ツアーに行ったらば。
実は無料施設ばっか使うんでほぼ遠距離バスの運賃だけのはずが、
食事代も自腹で、なのに3万も料金とられたんだって。
添乗員さんに聞いたらば、
いや、これは 5000円(税抜き)の特別企画ツアーですって言われたとかで。
どんだけピンはねして小遣い稼ぎしてるんだって怒って咬みついたら、
『他の人たちが、アタシは8万て言われたとか、
なんの10万って言われたとかいう人までいたみたいで。
それぞれで話が違うって怒り出して。
そいで、とうとう カレ氏を取り囲んで袋だたきになったらしくってvv』
『…何で途中から声が楽しそうなの? ミハルおねいちゃん。』
自分だけ格安にしてもらえてたって判ったんで、
これって怒るべきかな、でも特別扱いされたんだよね。
でもそれって、
アタシはそんなに出せないだろって思われたのかなぁ、
だったらバカにしてない? ヨウちゃんどう思う?…ってサ。
「…………」
「な? どーでもいいことだろ?」
つまりは肯定されて惚気を聞いてほしいんだよ、
ひどい男だって言っても
聞き入れねぇまんまで角が立つだけだから、
適当な相槌で丁度いいんだ。それに、
「ミハルの方だって、
こ〜んなチビに本気で相談してる訳じゃなかろうし。」
「そ、それは……う〜ん。」
なあ?なんて、同意を求められた葉柱が、
そうさなと、すんなり頷けなかったのは。
実は…別のお話を聞いていたからに他ならず。
とある風俗嬢が、尽くしていた男に裏切られた話を
この坊やへと聞かせたことがあり。
そちらのお嬢さんも、
小学生を相手にどうしてほしいとまでは言わなかったのに。
それから数日後になって、
ナシのつぶてでどうしても連絡が取れなくなってた相手の男が、
騙し取ってったお金を倍にしてわざわざ返しに来たらしく。
『今後は声かけないでくれ。いっそ忘れてくれ。
俺はどこか遠いところへマグロを釣りに行くから、いいな?』
そんなだけ言い残してそそくさと去ってったとかいう、
何とも微妙な都市伝説が、
一番ご近所の歓楽街で実しやかに広まっているのだそうで。
“つか、大人の機微が判る以上、
子供扱いしてもいいとも思えんのだが。”
ちょっと訊いてよと始まって、
こんな酷い奴なのよぉと悪口を紡がれたなら、
普通一般の子供は
素直に“悪いお兄ちゃんだ”とか“いけない大人だねぇ”としか
反応しないもんじゃなかろうか。
実は自分だけ贔屓されたと思ってんだよな やれやれなんて、
愚痴だか惚気だかよく判らん…なんて判断が出来てしまうところが、
「ミハルみたいにサ、
自分だけはまともに扱ってくれるとか、
そんな自分ならカレを更生させられるとか、
そういう方向に思い込んじゃうと、
外から何言っても聞かねぇし。」
まだまだか細い両腕を一丁前に胸高に組み、
野ばらの蕾みたいな愛らしい緋色の口許から、
感慨深げに吐息をつきつつ、
そんな奥深いこと言っちゃうなんてところが、
“既に、子供じゃないっての。”
そうと感じた感慨を、だがだが見せるわけにもいかなくて、
せんぶりでもすすったようなお顔してどした?と、
やっぱり子供離れした心配をされてしまう、
葉柱さんチのルイさんだったりするのであった。
〜Fine〜 11.11.30.
*以上、今更なネタでした。
小悪魔様、相変わらず、
お顔と中味の使い分けを絶好調でこなしておいでです。
年末のお買い物も、かわい子ぶりこで頑張るらしいですvv
愛らしさへの研究だって怠っておりませんで。
そのうち“A○B48”のオーデションとか
受けに行きかねない勢いです。(こらこら)
めーるふぉーむvv
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